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これは大切なもの。
コンチョと角を結んだだけの編んだネックレス。
でも、これは大切なものなんだ。
作り方は前述で済んでしまうくらい単純だけど、これで済まないものがこれに入っている。
これは、数年前に受け取ったある男性のものだ。その話。
以前、このネックレスをあるお客さんが欲しがった。
その時、ネックレスはすでに男性のものだったのだが、欲しがった人がどうしても同じものがいいと頼んできた。
ネックレスを身に着けた男性は黙っていたが、無言の眼差しで私に『ダメだと言ってくれ』と見つめていた。
私はそのお客さんに『これは持ち主の方のために作っていて、ちょっと出来ない理由があります。』と答えた。
そのお客さんは、似た物でもいいから、と言う。
すると男性は低い声で呟いた。
『俺は一生これを着けるんだ。ただ欲しいのと意味が違う』
そういうことなので、と私が言うと、お客さんは怪訝な感じで諦めてくれた。
このネックレスをつけている男性は、一生着けると言った。
それは本当で、風呂以外は着けている。
何度直したか。
スライドの紐がちぎれてなくなりかけたので、ボタンにしたらそのボタンも紐が細く伸びて役に立たなくなった。
ボタンをフックに変えてしばらく経つが、角の重みで本体が長くなってきた。
本体を編みなおしてフックのまま男性に戻して、という感じ。
『意味が違う』という経緯がある。
この人は自分の一個だけのものが欲しい、と私に話してこれを作った。
それまでアクセサリーを首にかけたことのない人だった。
私が注文制作できないとも知っていた。
でも、この人は頼んできた。
私は『随分まじめな人もいるんだな』と思って、引き受けた。
ナイフにしようと彫刻をしていた角の先端を切り落とし、そこに足を銜えた鳥を刻んだ。
飛ぶ力を自分から閉じた鳥の絵。足を銜えた意志を刻んだ。
その人の真っ直ぐに添えられるものを作りたかった。
何か、強く心に決めたのかもと思って。
出来上がると、男性はこのネックレスをとても喜んでくれて、受け取った日からずっと、
今も使ってくれている。
大切なものだった。本当に大切にしてもらえている、大切なもの。
こんな程度で?と思う人もいるかもしれないけれど、何が大事かは人それぞれ。
ある男性にとってはこれがそうだった。
彼が人生の再出発をした時に、これを渡している。
負け知らずの格闘家だった。
大金持ちでもあった。
でも彼は、本当の自分のまま生きていなきゃ意味がないと、ある年、一切をあっという間に捨てた。
その想いにちゃんと応えられたようで、彼の元気な笑顔を見るたびに嬉しい。
また直さないと。
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