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ジャックの豆

.29 2010 革の部屋 Leather comment(2) trackback(0)




ジャックの豆、と聞いて、あの有名な話以外の何を思い出せるだろう。
私はとりあえず他になし。
ジャックと豆の木の話はこびりついた美しい錆のように今も胸に甦る。


ジャック、物語全体では勇敢な彼だけど、冒頭ではおばかさんとまで呼ばれて。
初めは貧しくて、ちょっととぼけていて、考え無しの気の毒なジャック。でも、勇敢でチャンスを掴み取ったジャック。

大した子だ。










豆の話に戻ろう。


私の作った豆は若干大きめ。 でも、大きく天を突くならこの大きさでもありだろう。



日本では一時的に有名になった大きな種子を『ジャックの豆』と呼んだようだ。
見れば大層な大きさ。 ほんと、立派。

だけどこの種子は出身がオーストラリアで、この名称も日本での愛称だと聞く。
そういえば私の母も随分前にその大きな種を小さな鉢で育てていた。 きっと枯れたんだろう、今は知らないが。
見た時は「へぇ。」くらいにしか思わなかったのを覚えている。
あまりに観葉植物的な状態だったからだろう。


ジャックの豆(Jack Bean)、と英語で呼ばれている豆に、和名タチナタマメがある。
立つ・なた(多分、刃のこと)・豆。 という名前で、立ち上がる豆科。
この豆がジャックが手に入れた豆ではないだろうか、という説と、関係ない、という説。

まぁ、どちらでも良いことだ。

ジャックは魔法のかかった豆を手に入れているのだ。


普通に見る豆に魔法がかかったら、その時点で天にも届く豆になってしまうのだ。
彼が握り締めた豆は、言うまでもなく見た目はただの豆だった。

だからお母さんが泣いて怒って、窓の外に投げ捨てたのだ。
大好きな可愛いジャックの持ってきた笑顔と豆を、貧困の極みに。
その豆が外見に見分けられるような特別な輝きでも放っていたら、お母さんは捨てなかっただろうに。


でも、お母さん。捨ててくれて有難う、だ。

次の朝には雲を突き抜ける豆の『木』になってしまったのだから。
ここから快進撃だ。



ジャックは雲の国で、妖女のメッセージを聞いて、一念発起する。
だらだらと何となく過ごしていた今までのジャックはいない、幼き日に死に別れた父親の宝物を取り戻すためにオーガに挑む。
と、言っても、正確には挑むのではなくてこっそりと奪い返す。

それを3度続けた時に、やはり3度目はいい加減ばれてしまい追いかけられることになる。

しかもその時にジャックはオーガを挑発さえする。 『とれるものならとってみろ!』と。
見上げた度胸だ、ジャック。
顔も見ずに分かれた父の持ち物を、オーガから取り返す。その気持ちやいかに彼を貫いたか。


そして最後は、はしごを降りてくるオーガを豆の木ごと、終わらせる。
倒れた豆の木と叩きつけられて死に絶えたオーガ。


ジャックと母親はそのすぐ後に、突如出現した妖女に今までのいきさつを説明される。


豆と交換させたのは妖女の魔法、そうやってジャックの家を貧困から救おうとしたこと。
そして豆の木を見て、放っておいたりやり過ごしたりせずに、果敢にも登ろうと思ったことから始まった、幸せの始まり。
ジャックは自ら幸せを掴みに行ったのだ、と妖女は説明した。




なんとも感慨深い話。


ジャックが豆と交換したのは無邪気な幼心で、決して自分の家の置かれた状況など理解していなかった。
まさか、持ち帰ってお母さんに怒りの内に投げ捨てられた豆が巨木になるなんて思いもしなかっただろう。


無邪気なジャックの心を知ってて、妖女は彼を導いた。

でも幸せを手に入れようと思えたのは、何か変わるかもしれないと心のどこかで信じているからだ。
そんなジャックの、今は昔の物語。



ジャックが受け取った豆は5粒、と聞いているが。

ただの豆だった、という話がある。なぜなら交換を申し出た人は『少し足りない子供を、どうだまくらかそうかと考えて、』と文にあるからだ。
雌牛を引いているジャックから牛を取り上げるため、いかにも子供が夢中になりそうな何かを悪知恵で作り出しただけだったのだろう。


『魔法の豆なんだ』




だけどその悪知恵が、善なる妖女には丁度良いタイミングだったのだ。

ただの豆に魔法が宿った時から、彼らは救われていたのかもしれない。



この革の豆にも、これだけでは発芽もする見込みがないが、魔法が宿れば何とやら、だ。










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