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雲一つない空

.20 2010 一滴の栄養の部屋 comment(2) trackback(-)



良く晴れていた。 雲一つない、とは今日の空だ。

高らかに歌うトビの声が途切れない。 よほど今日は気持ちが良いのだろう。
見上げれば、何羽ではなくて、何十羽のトビが旋回していた。


風はまだ冷たいけれど、光が暖かい。 風も時折弱く吹くくらい。
だから今日は岩場のある海へ向かった。









海に出る手前は漁師さんの舟が繋いである場所を通る。
小さな防波堤と船着場。 漁師さんの使う用具が沢山置かれた側に、一匹の猫がいた。

随分、きれいな毛並みの猫。

体格も良くて、毛並みの艶もよくて、顔を洗いながら舌で口周りを一なめしていた。
何かお昼を貰った後だったのかも。

満腹そうだから、このまま日向で眠るのかも。










毛艶の良い船着場の猫にさよならをして、岩場へ歩いた。

私が行った時間はかなり潮が引いていて、緑色の海苔やまだ濡れているイソギンチャクがそこかしこに見えた。


この写真に写っているところは、いつもはほぼ水の下。









普段は歩けない場所が出現しているから、ちょっと奥まで行ってみたら。

小さなカニが水溜りから離れたところにいた。

逃げないでほしかったから、少し間を取って写真を撮った。
でもずっと動かないカニが不自然に思えて、そっとつついてみた。

カニは空っぽのようで、とても軽く、カニの身体は倒れそうになった。

死んでいたのだろうか、それとも抜け殻だったのだろうか。
水辺はそれほど遠くはない。
離れていたけど、死に間に合わないほどの遠さじゃなかった。


海に入れようかと手を伸ばしたけど、満ち潮になれば間違いなく海水に沈む場所。

そのまま、そっとしてきた。








海苔の匂いが立ち込める磯を歩いていると、変なものを見つけた。

拾い上げるとそれは10円玉。
ただ、やたらと薄くなっていて、それに緑青が出て欠け崩れていた。

文字も削れ欠けていて、ちゃんと分からないけれど、多分『昭和二十八年』とあるのだと思う。
今から相当前。 いつから海にいるのか分からないけど、随分と変わり果てた姿。










今まで気が付かなかったものは他にもある。

この辺り一体は地層が浮き出ているところだということを忘れていた。
ふと目を向けると、・・・・・?

これ、貝だったんじゃないかなぁ?と思うような形を見つけた。

でももし貝だったら、靴と比べてこの大きさ、すごく大きい。
潮汁なんか作ろうものなら、16cmの雪平鍋で貝の実が一つしか入らない気がする。


貝、というか、貝化石というのか、それとも貝の形が残った岩なのか。
とにかく、大きな貝の影。









貝の影のついた岩の裏側は、こんな風景。

以前も写真に撮ったことがある。ここはとても力強い風景だ、といつも思う。
黒い岩の間を流れる海。

今日は降りれそうなくらい、下のほうは水が引いていたけれど。
降りたら登ってこれそうにない気がして控えた。

私も大人になったんだな、と心の中で呟く。
ちょっと前まで、後先考えずに進んでしまうところがあったのに。








あの黒い岸壁から岩壁を伝って進むと出る場所。

この地層の壁は圧倒される。
いつ来ても、いつ見ても、「うわぁ」と見上げてしまう。


黄色い壁が青い空にくっ付いている。
トビの声が鳴り響いて、写真にはちゃんと写らなかったけど、白い三日月が青空に浮かんでいた。

なんという光景だろう。

なんという、美しさ。









黄色い岸壁のある砂浜。
ここだけ見ると、日本じゃないみたいに見える。


広くはないけれど、遮断された海辺の一角。 

この砂浜で、しゃがみこんで貝を拾ったりしてしばらく過ごした。
本当にいい天気だった。




3時半を回る頃。

そろそろ帰ろうと思って、小さな革袋に拾った貝やウニの殻を入れて来た道を戻った。
少しずつ冷えてくるのかと思ったけど、一向にそんな空気の流れはなかった。


日差しに暖められて空気も春のよう。

磯の香りは、夏のようなむせ返る強い匂いではなく、ほんの少しだけ香気を含んだ柔かい匂いだった。
ところどころ、通り過ぎていく浜辺の植物にも新しい芽が見える。


もうすぐ春が来るのだろう。








カマキリの卵も二つ見かけた。

小さなカマキリ達。 今はまだ出てくるには早いから、もう少しそこに。
あと少し、強い春風が吹き荒れるまで。



穏やかな、春の匂いがした一日だった。






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